家政婦は見た。第2弾2「東京脱出不成功の巻」

アンパンマングッズ

私は 家政婦裕子でございます。
雇い主はサンフランシスコからNYに移住したもうすぐ2歳になるやんちゃな男の子を連れた奥様です。
全くのボランティア家政婦ですので こちらの都合もかなり優先させてもらっていますが、
最も従順な心ある家政婦だと自負しております。


さて 綺麗に晴れ上がった2月9日のしかも成田で起きた事は皆様の記憶からは消え去っているかもしれませんし、
そんな事があったのか?と全く知らない方もいらっしゃるかと思います。
NYで待っておられる奥様と 日本を飛び立とうとしている私はもう大変でございました。


今回はオムツ等のリクエストはございませんでしたが、奥様のリクエストはアンパンマングッズ!
まあ 驚いた事に、アンパンマンの商品が世の中にこんなにあるのか?とびっくり・・・アンパンマンカレー、グミ、キャラメルコーン,ぺろぺろキャンディー、お弁当箱、おもちゃなど。
時間がないのでネットで頼んだらお店が開けるほどの物が集合。ひえ〜〜!
そうかと思えば、世界無形文化遺産になった「和食」を マクドナルドやシリアルやマカロニチーズで育って行くお坊チャマに体験させようという想いか、大人も日本の味を味わいたいという魂胆か 
皇室御用達の虎屋のお汁粉と今話題の茅の舎の出汁等のご要望。
何でこんなに???と疑問に感じながらも 言われるままに準備完了でございます。
大きなダンボールにたっぷり二つ。車で行く以外運びようがないという状態でございました。


2月9日 JAL 006ニューヨーク行き 11:10成田発
出発日の前日は 雪に慣れていない関東地方に大雪。
心配しながらも 自家用車かリムジンバスで大丈夫!!なんて 何の根拠もない自信があったのでございますが、
前日の夜も更けた頃にもしかして自力は無理、他力なら電車かタクシーが確実か?? 
その時点でタクシーの予約は全くない状態でございました。


快晴の2月9日7:00:頼まれ物がつまったダンボールは残して トランクだけで成田に行く事にして家を出たのでございます。
新橋から都営浅草線で成田まで行くつもりで。。。地下鉄がずっと続いているのだと思っていた。。。私、
なんて無知なのでございましょう!
新橋で駅員さまにお聞きいたしましたら 「成田まで行く方法は電車、バス、高速道路 全て不通で なにもありません」というのが 回答でございました。じゃあどうすれば良いのでございましょう?


8:00過ぎ:新橋からJRで西船橋まで行って そこからタクシーに乗って成田に向かおうと考えたのでございますが、西船橋の駅で40分待っていても タクシーが一台も来ませんでした。
そこで、こう言うときは情報が集まる東京駅にいた方が良いと判断し 東京駅に戻る事にいたしました。
「ただ今電話が大変込み合っております〜〜〜」の決まり文句を100回くらい聞かされた後 JALアテンダントと話しても「申し訳ありません、 出発時刻は未定で、搭乗手続きもしておりません。」と、マニュアル通りの応えだけでございます。


9:00:東京駅に重いトランクを引きずりながらもどり、耳をすますと 
「12時03分発から 成田エクスプレスが運行されます!」の放送が聞こえ、
やはり東京駅に戻った事は正しかったと 賢い家政婦だわ!と自負してから慌てても仕方ないとゆっくりお茶しておりました。
再びJALに確認するが「申し訳ありません。出発時刻は未定です。」と 言葉だけは申し訳ないと連発するが心がこもっていない感じでございます。


11:30: 来た電車に乗って立ってでも成田に着けば NY行きの飛行機に乗れるはず・・・と信じて成田エクスプレスのホームに向かったのでございます。
ホームは大きな荷物を持った人、人、人、特に各国の旅行者が目立ち、色々な国の人がどの電車に乗れば成田に行けるかこの私に聞いてくるのでございます。
英語のアナウンス、そういえば 一回も聞きませんでした。
「倒木を伐採していますので 13時30分の成田エクスプレスまでキャンセルになりました」と舌足らずのホームの駅員さんが怒鳴りながらのアナウンスをなさいますと、「倒木」が盗賊に「伐採」が脱線にきこえ・・・・私の頭の中では成田近辺で何が起こっているのかさっぱり解らない状況に陥ったのでございます。


JALに電話して「今日は出るのですか?出ないのなら成田に行きませんが・・・」と聞いても
「申し訳ありません、出発時刻は未定になっています。」の繰り返し。
『じゃあ飛び立つのね! 行かないと!飛行機に乗らないと!!』と奥様とお坊チャマに会うという使命感がさらにわき上がり、戦闘態勢に入った気分でございました。


13:30 一台の電車が到着し、「この電車は成田空港行きです」と放送が入ったのでございます。 外国人に「この電車に乗りなさい。成田に行くから」とつたない英語でお教えしましたが、人の事はさておき自分が乗らなくては!と必死に乗り込めたのでございます。どの方も足下には大きなスーツケースがあるので 見た目よりぎゅうぎゅう詰めで、泣いている赤ちゃんがそばにいらっしゃいましたが 何をしてあげる事もできませんでした。


14:30:「倒木を伐採するには送電を停止するため、時間がかかっております。」お願いだから 倒れている木を片付けなければならないので・・・・とか 解り易い言い方をしていただけませんでしょうか?それに、右往左往している外国人観光客に英語でも説明してさしあげていただきたいと 思った次第でございます。 
現実は存じませんが 映画で見るようなインドの列車のようでございました。
NYの奥様も ネットで情報を調べてくださりそれを送ってくださるのですが、な〜〜んも変わり無しでございます。


16:00 ついに成田空港に到着。200%に膨れ上がった乗客が、一気に放たれ出てくる。
なにか騒動がおこるのではないかと危機を感じるほどでございました。
払い戻しに並んだら日が暮れてしまいそうで、指定席代はJRにくれてやりましたでございます。


16:30  もみくちゃになりながらやっと成田空港のJALのカウンター近くに到着。
それと同時に白い紙が張り出され、なんとそこには
006便 ニューヨーク行き 欠航」 の文字があったのでございます。


力が抜けました。 今までの努力は何だったのでございましょう?
JALの職員に 「欠航になったけど 振替便の手続きをしてほしい」とたずねると「申し訳ございません。手続きはネットか電話でお願いします」の返事でございます。


17:00 やっとJALに電話が通じ 次に乗れる飛行機は2日後の2月11日11時10分発だと知らされたのでございます。が〜〜ん!
そうこうしているうちに、 滑走路は何の問題もない成田空港にどんどん到着便が着き 人が溢れてくるのでございます。


17:30 こう言うときは 焦らず腹ごしらえでございます! 
同じ考えの方たちがレストラン街にごった返していたのでございますが、
運良く「お釜のご飯がなくなりました!」の閉店間際の3人に 滑り込みセーフ。 お寿司をがっつりいただきました。


18:30
さて 帰りはどういたしましょう? 一時間に一本のペースで動き出した電車に乗ろうとする人の列は終わりが見えません。 同じ待つなら タクシーを待って家まで送っていただきたいと タクシーの列にならんだのでございます。


19:00
タクシーの列も全く進まない状態が続いたのでございますが、そこに突然現れた輝くお助けマン「白タクのおじちゃん!」でございました。
「一人2万円で都内まで行ってあげるよ。高速道路は通行止めだから 下道行くけど3時間半で行くよ!良く道を知っているから どう?」と。。。怪しげに誘われたのでございます。違う国なら勿論乗りませんし、普段なら法に反した事している不届き者と貶まして頂くのでございますが、口から出た言葉は「はい!よろしくお願いします」の即答でございました。 
関西人のおじさんと若者が
「おっちゃん 一人2万円は高いで!!一人一万円にせえや!」と 交渉してくれて、その関西弁の良くしゃべる面白いおじさんたちと 東京までの小旅行となったのでございます。最後の締めが行きずりの人たちとのお笑い乗り合いタクシーとなったため、疲れが随分軽減したのではないかと思っております。


22:30 帰宅_


どなたか 2月9日に使ったお金を返していただきたいでございます。
できれば 時間も!!
海の向こうで首を長くして待っている奥様とお坊チャマがいらっしゃるのですよ!
家政婦という職業ではございますが、言いたい事ははっきりでございます!!


高速道路だけでも チェーン規制をするとか通してくださいな! 道路公団さん!
欠航の決断が16時半?!遅すぎやしませんか?お客様の気持ちを大切にしてください!JALさん! 
東京オリンピック こんなお粗末な空港玄関で できますか? お役所の方々!
積もりそうなら なにか準備してください!京成電鉄さん! JRさん!


大変に疲れた 東京脱出不成功の巻でした。


本来ならNYに到着して久しぶりの再会をしている筈の次の日、
日本橋三越で ワコールのおばさん用のステキな水着を購入いたしました。
その水着に出会う為に 東京脱出不成功の一日があったのだと!
と 思って納める事にいたしました。